太陽のない世界-1

20171201
太陽のない世界の話である。
そこは、火山の火口にできた町だった。町は、世界のどこよりも高い場所にあった。空気が薄いので、いつでも星がよく見えた。ガスの星のまわりを漂っている宇宙ゴミの輪っかまで見えるほどだった。
私は、その町で炭鉱夫として働いていた。火口では、七色に輝く美しい石が採掘されていた。
火口近くの岩からは絶えずガスが噴出しており、その火山ガスが泥と空気と混ざり合い、石を形成していた。その石は、町のすべての資源だった。
石は内側から輝くので、家々の明かりや街灯などに使用された。また、衣服や家具、様々な製品にはこの石が必ずといっていいほど使用されていた。

しかし、この石を採掘するのは一苦労だった。なにしろ勢いよく噴出しているガスの中、300度もの高温になっている岩板を少しずつ砕かなければならないのだ。
しかも、そのガスはひどいにおいなので、頑丈なマスクをつけなければならなかった。だが、その仕事をやめるわけにはいかなかった。
町で暮らすには石が必要だし、私の父も祖父も曾祖父も、ずっとこの仕事をしていたのだ。当たり前のことだった。
何の疑問も持たず、私は仕事を誇りに思い、町を支える者の一人として生きているつもりだった。

ある日、いつもより多くのガスが噴出し、町は濃い煙に包まれた。みんながマスクをつけて生活をした。
そんな日が一週間ほど続いたのち、大きな音とともに火口の口がぱっくりと口を開け、真っ赤なマグマが勢いよく噴き出した。
マグマは、町と私と街の人々すべてを飲み込んだ。私は死んだ。マスクが視界を狭くしていたので、本当は何が起こったのかもよく分からないままだった。
私は、他の人々と同様に、たましいとなり、大きさを増していく黒煙を通り抜け、星々の輝く夜空へと昇って行った。
振り返ると、黒煙の立ちのぼる、高いけれどもちっぽけな山が、広い大地にぽつんとあった。世界はそれだけだった。私は何も思い残すことなく、空高くのぼっていった。振り返ることは二度となかった。

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